「電気工事施工管理技士と電気工事士、何が違うの?」という疑問は、現場に少しでも関わったことがある人なら一度は感じたことがあるかもしれません。どちらも“電気”に関わる国家資格でありながら、仕事内容も求められるスキルも、実はまったく異なります。ざっくり言えば、電気工事士は「実際に手を動かして電気設備を取り付ける技術者」、一方で電気工事施工管理技士は「その工事全体を計画し、現場を指揮する管理者」です。同じ工事に関わる立場であっても、役割の方向性が異なることで、キャリアの広がり方にも違いが出てきます。この記事では、それぞれの資格の役割や働き方の違いを丁寧に比較しながら、どちらを目指すべきかを考えるヒントをお伝えしていきます。
資格の取り方・受験資格・難易度を比べると?
電気工事士と電気工事施工管理技士。どちらも国家資格ですが、取得に必要な条件や難易度には明確な違いがあります。まず、電気工事士には「第二種」と「第一種」があり、受験には基本的に学歴や実務経験は必要ありません。誰でも挑戦できる開かれた資格であり、試験内容も比較的基礎的な知識や技能が中心です。合格率も50%前後と比較的高めです。
一方で、電気工事施工管理技士、特に「1級」は、一定年数以上の実務経験がないと受験できません。また、学科試験と実地試験の両方をクリアする必要があり、実務を通じて得た知識・経験の応用力が求められます。合格率は学科で40〜50%、実地では30%程度とやや低め。つまり、経験者向けの高度な資格であり、キャリアの中で段階的に目指すポジションとも言えます。
また、勉強内容にも違いがあります。電気工事士が法規・配線図・器具の取り扱いといった“技術的な基礎”を問われるのに対し、施工管理技士では工程管理・品質管理・安全管理など“管理者視点の知識”が重視されます。どちらが簡単かという話ではなく、「目指す仕事」によって学ぶべき方向性が変わると捉えることが大切です。
年収・待遇・将来性の違いは?求人票で見えるリアルな差
資格がもたらす最大の違いのひとつが「収入面」でしょう。実際、電気工事士の平均年収は350万円〜500万円前後。一方、1級電気工事施工管理技士になると500万円〜700万円以上の求人が多く見られます。この差は、単に業務量や勤務年数の違いというより、「任される責任の範囲」によって生まれるものです。
電気工事士は実際に工事を行う技術者として、現場で必要不可欠な存在です。しかし、施工管理技士は工事の計画・人員調整・安全管理・工程の全体進行までを担う“指揮官”のような立場。つまり、より上流の仕事に関われる分、待遇にも反映されやすくなります。また、公共工事や大規模施設の案件では、施工管理技士がいなければ契約自体が成立しないケースもあり、企業としても資格者を確保したいという強いニーズがあります。
さらに注目すべきは、将来的なキャリアの広がり方です。電気工事士のままでも職人として高い技術を極める道はありますが、現場監督やマネージャーといったポジションに進みたい場合は、施工管理技士の資格がほぼ必須条件になります。「もっと幅広く仕事をしたい」「後輩をまとめて現場を動かしたい」と考えるなら、将来の選択肢を広げる意味でも、施工管理技士へのステップアップを視野に入れる価値は十分にあります。
法的にできること・求められる役割の違いとは
電気工事士と電気工事施工管理技士。この2つの資格の違いを語るうえで外せないのが、「法的にできること」の差です。どちらも国家資格ではありますが、それぞれに法律上の役割と限界が明確に定められており、これが実務での使われ方や評価にも大きく影響します。
まず電気工事士は、電気工事士法に基づいて「電気工作物の工事に従事できる技術者」として位置づけられています。具体的には、配線工事や機器の設置、接続といった作業を直接行うために必要な資格であり、作業自体が法で定められた独占業務です。無資格者がこれらの作業を行うことは法律で禁止されており、たとえ経験があっても無資格での工事は認められていません。
一方で、電気工事施工管理技士は建設業法に基づいた資格であり、施工計画の立案、安全・品質・工程管理といった“管理業務”を行うための資格です。さらに、一定の工事規模を超える場合には、1級所持者でなければ「主任技術者」や「監理技術者」として現場に配置できないと法律で定められています。つまり、資格がなければ請け負うことすらできない工事が存在するということです。
両資格はまったく別の法律に基づくものであり、「どちらかで代用する」といったことはできません。この違いを正しく理解することで、自分のキャリアの選び方や、企業におけるポジションの意味がより明確になります。電気工事を「手でこなす」のか、それとも「現場を動かす」のか。その選択に応じて、取得すべき資格も変わってくるのです。
実務での関わり方|同じ現場で“どう連携”しているのか?
現場での実態を見てみると、電気工事士と電気工事施工管理技士は、決して対立する関係ではありません。むしろ、互いの役割を補完し合うパートナーとして、一つの工事を完成させるために協力し合っています。電気工事士が実際に手を動かして工事を進める中で、施工管理技士は工程全体の進捗や安全面をチェックし、問題が起きた際には全体のバランスを見ながら調整を行います。
たとえば、図面に書かれた内容が現場の状況に合わない場合、電気工事士が違和感を指摘し、施工管理技士が関係各所と調整して設計変更を行うこともあります。また、工期がタイトな現場では、管理側が職人の作業順序や作業時間を再調整し、作業効率を高める動きを取ります。こうしたやり取りがスムーズに進むかどうかは、双方の信頼関係とコミュニケーション力にかかっています。
特に中小規模の工事会社では、電気工事士と施工管理技士の役割が重なる場面も多く、施工管理技士が現場作業を兼ねるケースも珍しくありません。そのため、どちらか一方の視点しか持っていない人よりも、両方の業務を理解できる人材のほうが、現場全体を円滑に回せると高く評価されます。単に資格を持つだけでなく、「どちらの立場にも立てる」という実務的な視点が、これからの現場ではより一層求められていくでしょう。
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どっちを目指すべき?目的別・職種別の選び方ガイド
どちらの資格を取得するべきか迷っている方にとって大切なのは、「自分がどんな働き方を望んでいるのか」を明確にすることです。現場で手を動かして職人として腕を磨きたいなら、まずは電気工事士の資格から始めるのが自然な流れです。手に職をつけて安定した仕事に就きたい、独立を視野に入れているという方にも適しています。
一方で、「現場の責任者として人をまとめたい」「工期やコストまで含めた全体管理を任されたい」と思っているのであれば、電気工事施工管理技士を目指すのが理にかなっています。特に1級の資格を取得すれば、主任技術者・監理技術者として大型案件に関われる道が開け、将来的には現場だけでなく管理職や経営に近い立場での活躍も見込めます。
また、将来的にキャリアの選択肢を広げたいなら、まず電気工事士を取得してから、実務経験を積んで施工管理技士を目指すという二段構えのアプローチも有効です。この方法であれば、現場の実際を知ったうえで管理の立場に進むことができ、実務的にも説得力のある人材として評価されやすくなります。
資格はゴールではなく、あくまで通過点です。自分の得意なこと、興味のある働き方を踏まえたうえで、どちらを選ぶべきかをじっくり考えることが、後悔のないキャリア選択につながるはずです。