「電気工事施工管理技士」と「電気主任技術者」。名前が似ていることもあり、どちらを目指すべきか迷う人は少なくありません。特に電気関係の仕事を始めたばかりの方にとっては、業務の違いや資格の役割がわかりにくく、混乱の原因になることがよくあります。
たとえば、「主任」とついているから管理職的な資格だと思われがちですが、実際には施工管理技士も現場では重要な管理者の立場です。また、どちらも国家資格でありながら、管轄する法律や必要な実務経験、活躍する業界が大きく異なるため、目的を明確にしないまま進むと、せっかくの努力が十分に活かされないこともあります。
こうした背景から、本記事ではそれぞれの資格がどんな役割を担っているのか、どのような業界・業務に関わるのかを具体的に整理し、自分に合った進路を見つけるヒントとしてお伝えしていきます。
電気工事の“現場責任者”としての施工管理技士
電気工事施工管理技士は、建設現場で電気工事全体を管理・統括する立場にあります。自らが工具を持って作業するのではなく、工程の調整や安全管理、品質の確認、コスト管理など、複数の業者が関わる中で全体をまとめる「現場責任者」としての役割を果たします。
この資格は建設業法に基づいて位置づけられており、一定規模以上の工事では有資格者の配置が求められることもあります。特に1級施工管理技士は「監理技術者」として現場に専任で配置される要件を満たすため、大型案件を担当する企業にとって重要な人材です。
また、現場における調整力が問われる場面も多く、施工図面と実際の進行状況とのズレを見極め、職人や協力会社と連携しながら進行を管理する力が求められます。そのため、現場経験を経てから施工管理技士を取得するケースが多く、実務に裏打ちされた判断力や調整能力が重視されます。
一方で、デスクワークの要素も多く、書類作成や進捗管理、各種申請の手続きなど、裏方の仕事も少なくありません。華やかさよりも着実なマネジメント能力が問われる資格であり、現場の全体像を把握する力が試されるポジションです。
“設備責任者”としての電気主任技術者、その業務と権限
電気主任技術者は、電気工事とはやや異なるフィールドで活躍する資格です。主に「事業用電気工作物」の保安監督を行う責任者として、電気設備の安全な運用・点検・管理に携わります。管轄する法律は建設業法ではなく、電気事業法です。
ビルや工場、大規模施設などでは、高圧電力や特別高圧を扱う場面が多く、それらの電気設備が常に安全に動作するよう監視・点検するのが主任技術者の仕事です。企業によっては専任として配置されるほか、「外部選任」として外部委託を受ける形でも活躍できます。
この資格には第三種・第二種・第一種と区分があり、それぞれ対応できる電圧範囲や設備規模が異なります。特に第一種は全国でも取得者が限られ、発電所や大規模プラントなどでの業務に就くことが多くなります。
また、設備トラブル時の対応や、定期点検の計画・実施、行政への報告書作成など、技術と法令知識の両方が求められる職種です。現場での即時対応力と、長期的な安全管理の視点を併せ持つ必要があります。
どちらの資格が自分に合う?職種・業界別に見る向き不向き
電気工事施工管理技士と電気主任技術者は、それぞれが活躍する業界や職種に大きな違いがあります。そのため、「自分にはどちらが向いているのか」を判断するには、まずどのような働き方をしたいのか、どのような職場環境を望むのかを明確にすることが欠かせません。
施工管理技士は、建設業界や電気工事会社での現場管理が主なフィールドです。新築工事や改修工事の現場に入り、職人や協力会社と連携しながら、計画通りに工事を進めていく立場になります。工程調整や安全対策、資材の手配、報告書の作成など、日々の業務は多岐にわたり、現場ごとに状況も大きく変化します。屋外での作業や突発的な対応も多く、「動きながら考える」タイプに向いています。
一方、電気主任技術者は、工場・ビル・商業施設など、電気設備の維持管理を行う施設側の立場に近い仕事です。工事の進行というよりは、既に稼働している設備を安全に維持することが中心となります。毎日の監視業務や定期点検、法令対応が業務の柱であり、一定のルーティンの中で正確性と記録力が求められます。「着実にものごとを進める」「慎重な判断が得意」という方に適した職種です。
また、将来的にどのような立場を目指すかによっても、資格の選び方は変わってきます。たとえば、現場で人を動かす力を伸ばしたいなら施工管理技士、安定した施設管理の分野で専門性を深めたいなら電気主任技術者がそれぞれ適していると言えるでしょう。
ダブルライセンスは有利?現場での信頼と年収に与える影響
施工管理技士と電気主任技術者、両方の資格を取得している人はまだ少数派ですが、その分、現場や企業からの評価は高くなります。なぜなら、電気設備の「施工」と「保守管理」という二つの視点を兼ね備えた人材は、非常に貴重だからです。
例えば、電気工事会社においては、施工管理技士として現場をまとめる一方で、主任技術者として保安管理の責任も担える人がいれば、外部委託を減らし、自社内で完結できる業務の範囲が広がります。これは企業にとってコスト削減や信頼性の向上につながる大きなメリットです。
また、ビルメンテナンスや製造業の設備管理部門では、電気主任技術者としての業務が中心でありながら、工事発注や更新対応の際に施工管理技士としての知識が活かせる場面が多くあります。このような相乗効果が見込めるため、ダブルライセンスを持つ人材は「現場と設備、両方を理解している人」として、重宝されやすいのです。
給与面でも、資格手当が複数加算されることに加え、職域の広さが昇進や転職の可能性を広げてくれる要因になります。とくに中小企業では、一人で複数の役割を担える人材が求められる傾向があり、資格の組み合わせがそのまま強みとして評価される場面が増えています。
資格を取得するには時間も労力もかかりますが、自分の将来を見据えて、必要な分野から一つひとつ積み重ねていくことが、長期的なキャリア形成につながっていきます。
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進む道を選べる自分になるために、まず知識から始めよう
資格は、どれを持っているかよりも「何を目指してそれを選んだか」が大切です。電気工事施工管理技士も、電気主任技術者も、どちらも重要な専門資格であり、それぞれの業務には社会的な責任と意義があります。
どちらが上、どちらが得という話ではなく、自分がどんな働き方を望むのか、どんな業務に興味を持っているのか。その問いに正直に向き合うことが、資格選びの第一歩になります。
知識を得て制度を理解することは、自分の可能性を広げるための準備です。今はまだ迷っていても大丈夫。情報を正しく集め、自分に合った道をじっくり見つけていけば、資格はきっと味方になってくれるはずです。
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