分電盤からコンセントまで、寸分の狂いなく配線を引く。その技術は、現代社会を支える根幹であり、電気工事士としての誇りの源泉でしょう。安全な暮らしを守るその仕事は、間違いなく価値あるものです。
しかし、少しだけ立ち止まって考えてみてください。あなたの丁寧な仕事は、そのほとんどが壁や天井の裏に隠れ、人の目に触れることはありません。それは「あって当たり前」のものとして、日常に溶け込んでいます。
では、あなたの仕事の中で、唯一「作品」として人の目に触れ、空間の印象を決定づけるものは何でしょうか。
それが「照明器具」です。
あなたが取り付ける一台のペンダントライトが、ダイニングを温かい団らんの場に変える。あなたが設置する一本の間接照明が、ホテルの廊下を非日常的な空間へと誘う。照明器具の取り付けは、単なる作業ではありません。光を設計し、空間を演出し、人の感情を動かすクリエイティブな行為なのです。
この記事では、多くの電気工事士が見過ごしがちな「照明器具」という領域の奥深さと、そこに眠るキャリアの可能性について語ります。ただの作業で終わるのか、それとも人の記憶に残る作品を創り出すのか。その分岐点は、あなたの今の選択にあるのかもしれません。
【この記事の目次】
・あなたが扱う「照明器具」でキャリアは変わる。量産品と高級品、その先にあるもの
・たかが1mm、されど1mm。一流デザイナーを唸らせる照明施工の現場
・「照明に強い」は本当か?求人票だけでは見抜けない会社の実力
・私たちは「取り付け屋」ではなく、共に空間を創る「パートナー」を求めている
・あなたが灯す光が、誰かの特別な空間になる
■ あなたが扱う「照明器具」でキャリアは変わる。量産品と高級品、その先にあるもの

電気工事士として、あなたが日々現場で触れる照明器具は、実はいくつかのレベルに分類できます。そして、どのレベルの器具を扱っているかが、あなたのスキルや将来のキャリアを大きく左右します。
・1. 量販店で手に入る汎用器具
主に住宅や小規模なリフォームで使われる、シーリングライトやダウンライトなどです。取り付けは比較的容易で、スピードと効率が重視されます。多くの現場をこなすことで経験は積めますが、技術的な深化は難しく、価格競争に陥りやすい領域でもあります。
・2. 国内メーカーの建築向け照明
オフィスビルや商業施設で標準的に採用される、機能性を重視した照明器具です。図面通りの正確な施工が求められ、大規模な現場での連携や工程管理のスキルが身につきます。安定した需要がありますが、デザインや仕様は画一的になりがちで、「自分の仕事」としての個性を出しにくい側面もあります。
・3. 海外の高級デザイン照明や特殊照明
そして、これらとは一線を画すのが、デザイナーズホテルやブランドショップ、高級レストランなどで使われる照明器具の世界です。イタリアや北欧から輸入された繊細なガラス細工のシャンデリア、建築と一体化して光を放つ特殊な間接照明など、一つひとつがアート作品のようです。
これらの器具を扱うには、単なる電気工事の知識だけでは通用しません。素材の特性を理解し、デザイナーの意図を汲み取り、建築構造まで考慮した上で、最も美しく見える設置方法を自ら考え出す必要があります。挑戦の連続ですが、ここでしか得られない唯一無二の技術と経験が、あなたの市場価値を飛躍的に高めるのです。
■ たかが1mm、されど1mm。一流デザイナーを唸らせる照明施工の現場

「ここの照明、もうちょっと『いい感じ』にならないかな」
設計デザイナーから、そんな抽象的な要望を投げかけられたら、あなたはどうしますか。一流の照明専門の電気工事士は、ここからが腕の見せ所です。
あるブティックの現場での話です。壁に飾られた一点物の絵画を照らすスポットライト。デザイナーの指示は「絵の質感が一番引き立つように」。職人は、ただ照らすだけでは不十分だと考えました。彼は、複数の光源を様々な角度から試し、絵の具の盛り上がりによって生まれる微細な影まで計算し、最も立体的に見える一点を探り当てたのです。その完璧な光の当たり方を見たデザイナーが、思わず「参りました」と呟いたといいます。
また、あるレストランでは、重さが50キロを超える巨大なシャンデリアの設置がありました。天井の意匠が複雑で、指定された位置には下地がありません。普通の電気工事士なら設計変更を依頼するところですが、その現場のプロは違いました。建築図面を読み解き、天井裏の梁の位置を正確に把握。そこから最小限の補強で、かつデザインを一切損なわない吊り下げ方法を自ら考案し、見事に設置してみせました。
これらは、図面通りに作業するだけでは決して辿り着けない領域です。1mmの取り付け位置のズレが、光の印象を台無しにしてしまう。器具の重さ、素材の特性、空間全体のバランス。そのすべてを理解し、自分の技術と知識を総動員して最適な答えを導き出す。
この難しさこそが、この仕事の面白さであり、AIや機械には決して真似できない職人技の真髄なのです。
■ 「照明に強い」は本当か?求人票だけでは見抜けない会社の実力

「照明工事の実績多数」「デザイン性の高い空間づくり」
求人情報を見ていると、魅力的な言葉が並びます。しかし、その言葉を鵜呑みにして転職し、「思っていたのと違った」と感じるケースは少なくありません。
よくある失敗は、「お洒落な照明の写真に惹かれて入社したけれど、実際は下請けの下請けで、安い汎用器具の取り付け作業ばかりだった」というパターンです。結局、以前の会社とやっていることが変わらず、スキルアップにも繋がらない。これでは、何のために転職したのか分かりません。
では、本当に照明のプロとして成長できる会社を、どうやって見極めればいいのでしょうか。見るべきポイントは3つあります。
・1. 施工事例の「質」と「デザイン性」
会社のウェブサイトなどで施工事例を確認する際、ただ件数が多いだけでは不十分です。どんな空間を手がけているか、そのデザイン性は高いか、そして照明が空間の中でどのような役割を果たしているかを注意深く見てください。多様な有名ブランドや著名なデザイナーとの仕事が多ければ、それだけ高いレベルの技術力が求められている証拠です。
・2. 扱っている照明器具のブランド
もし可能であれば、その会社が普段どのようなメーカーの照明器具を扱っているかを確認しましょう。国内外の幅広い高級ブランドや、特殊な照明器具を扱っているのであれば、それだけ専門的な知識と技術を蓄積している可能性が高いと言えます。
・3. 設計やデザイナーと直接対話できる環境か
下請けの作業に終始する会社では、元請けからの指示通りに動くだけで、自分の意見を求められることはほとんどありません。一方で、設計の初期段階からプロジェクトに参加し、デザイナーと直接意見を交わしながら仕事を進める環境がある会社は、職人を単なる作業員ではなく、共に空間を創るパートナーとして尊重している証です。
■ 私たちは「取り付け屋」ではなく、共に空間を創る「パートナー」を求めている

前項で挙げた「プロに成長できる会社選びの軸」は、そのまま私たちが大切にしている価値観でもあります。
私たちのウェブサイトを見ていただければ、手がけてきた空間の多様性と、照明が持つ力をご理解いただけるはずです。国内外の様々なブランドの照明器具を扱い、その一つひとつの特性を最大限に引き出すノウハウを蓄積してきました。それは、数多くの現場で挑戦と試行錯誤を繰り返してきた実績の証です。
何より重要なのは、私たちの現場では、職人が「取り付け屋」で終わらないことです。プロジェクトの初期段階から設計者やデザイナーと対等な立場で議論を交わします。「この空間なら、こちらの照明の方がよりコンセプトに合うのでは」「この収まりを実現するためには、建築側でこういう工夫が必要だ」といった、現場を知るプロとしての意見が求められ、尊重される文化があります。
もちろん、要求されるレベルは決して低くありません。しかし、困難な課題を乗り越え、チーム一丸となって最高の空間を創り上げた時の達成感は、何物にも代えがたいものです。ここでは、電気工事士としての技術を磨くだけでなく、照明プランナーや施工管理者といった、より上流のキャリアを目指す道も開かれています。
あなたの経験とスキルを、ただの作業ではなく、価値ある作品を創造するために活かしてみませんか。
もし、私たちの仕事に少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ一度、詳しい仕事内容やキャリアについてお話しさせてください。
https://www.akaridenki.com/recruit
■ あなたが灯す光が、誰かの特別な空間になる
この記事を通して、電気工事士という仕事の新たな可能性を感じていただけたでしょうか。
コンセントや配線工事が人々の「日常」を支える仕事だとすれば、照明工事は人々の「非日常」や「特別な時間」を演出する仕事です。あなたがミリ単位でこだわって設置した一つの照明器具が、レストランでプロポーズするカップルを優しく照らし、ブティックでお気に入りの一着に出会う瞬間をドラマチックに彩る。
自分の仕事が、誰かの記憶に残る美しい光景の一部になる。これこそ、照明のプロフェッショナルだけが味わえる、最高のやりがいです。
もちろん、そこに至る道は簡単ではありません。しかし、技術を追求する情熱と、より良いものを創り出したいという探究心があれば、必ず乗り越えられます。私たちは、そんな想いを持つ仲間を求めています。
まずは話を聞いてみるだけでも構いません。私たちがこれまで手がけてきた空間の写真を見ながら、照明の面白さや、あなたのこれからのキャリアについて、ざっくばらんにお話しできれば嬉しいです。
何かご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。

